元の録音環境と、反響音の悩み
あみたろの音声はすべて、工務店施工の自宅録音室で収録しています。
ざっくり言うと、学校の音楽室みたいな孔つきの壁や、吸音タイプの天井、厚手のカーペットで作った約2.4畳の個室です。
録音室の設計にあたってお願いしたのは、どんなに大きな声を出しても絶対に外に聞こえないこと。
「声が漏れてるかも」って不安があると元気で明るい声が出ないので、この防音性能は必須でした。
この防音性能を実現するために、家全体を防音性重視の断熱材で囲み、録音室の周りの内壁にも同じ断熱材を入れました。(通常は内壁には断熱材は入れません)
おかげで夜中でも安心して叫べる、周囲の騒音にも左右されない録音環境が手に入りました。
が、せっかくの有孔ボード壁の裏に断熱材を詰めたため、吸音性能が低下し、大きな声を出すと少し反響するようになりました。
(あみたろはかなり声が大きいです…)
もちろん、普通の賃貸マンションの洋室などと比べると、反響音はかなり抑えられています。
ここで収録したセリフ素材は大手商業作品にも多数使われているので、セリフ素材の宅録環境としては十分と言えるでしょう。
でも、この「少しの反響音」が、音声合成ではノイズのもとになるようです。
これは、音声合成の研究や開発を応援しているあみたろにとっては致命的な問題です。
というわけで、かねてよりの悩みだった「反響音」をどうにかすることにしました!
いただいたアドバイス
反響音対策については、Twitterでいろいろなアドバイスをいただきました。
いろんな方の意見をまとめると、こんな感じ。
- ノイズ除去プラグイン等でそれなりには消せる
- でも完全には消えないし、音質も落ちる
- 声と重なっているノイズだけを後処理で完全に消すことは不可能
- とにかく反響音やノイズのない状態で録音、が鉄則
というわけで、高額なノイズ除去プラグインを購入する前に、録音室の反響音そのものを減らすことに。
反響音対策=吸音
問題になっている反響音は、壁などに当たって反射した声。
だから、なるべく反射しにくい壁に改造すればいいわけです。
確実なのは、密度の高いスポンジでできた吸音材で壁や天井を覆うことです。
吸音スポンジは、録音室入手前にマイクを囲む形で利用して高い効果を実感していました。
が、これで部屋を覆うとなると、かなりの費用が必要になります。
また、経年劣化するスポンジ素材を壁に直接貼るのも、できれば避けたいところです。
そこで、ひとまず手持ちのカーテンで壁を覆ってみることにしました。
反響音対策をやってみました
録音室の天井付近につっぱり棒をつけて、以前の住居で使用していた吸音カーテンを吊るしてみたら…
つっぱり棒が落下しました…!
普通のカーテンなら大丈夫だったけど、吸音カーテンの重みには耐えられなかったみたい。
この状態でも、声を出してみるとかなり反響音が減っているように感じました。
方向性は間違っていないはず。
というわけで、つっぱり棒をより強力なものに。
さすが強力つっぱり棒、びくともしません。
防音カーテンは使い切ったけど、もう一面ぐらいは対策したいところ。
裏地付きのどっしりとした遮光カーテンが余っていたので、縦に2枚連結。
厚みがあってミシンでも手縫いでも歯が立たないので、アルミクリップでとめました。
これをもう一面の壁に。
できたー!!
マイクの背面全部を厚手のカーテンで覆うことに成功しました!
ついでにもう一面にも、余っていた薄手の毛布を。
背面以外の壁を隠す形になりました。
この空間で歌ったりセリフを読み上げたりしてみると、反響音が激減していることがはっきりとわかりました…!
余っていたカーテンを吊るしただけで、こんなに変わるなんて…!
改造前後の比較動画
あまりの効果に驚いて、動画を作りました。
改造前後の音質の違いを聴いてください!
違いは歴然、ですよね。
あみたろ声の音声合成・しぐたろいど作者のseichiさんからもこんな嬉しいお言葉が。
時間はかかりそうですが、この環境でITAコーパス読み上げ音声を再録したいものです…!
改造前後のあみたろ声素材の音質について
一連の改造は2022年4月9日に行いました。
また、↑の動画制作後に、他の壁も遮光カーテンで覆いました。
反響音が激減して音質がかなり向上したので、音声素材の収録時期によっては、組み合わせた時に若干の違和感が生じる可能性があります。
新しい環境ですべての音声素材を再録できれば良いのですが、何年もかけて作ってきた膨大な音声素材集なので、すぐに差し替えるのは難しいです。のんびりがんばります…!
改造の詳細
今回の反響音対策は、賃貸マンションなどでも使えるやり方です。
用意するのは、分厚いカーテンと強力なつっぱり棒だけ。
自宅録音で反響音に困っている方は、高額なノイズ除去プラグインを導入する前にぜひ試してみてくださいね!
↓ Twitterでいただいたアドバイスは、こちらにまとめさせていただきました。
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